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弁護士法人心 大阪法律事務所

近親者が被害者の看護のために休業した場合休業損害を請求できますか?

  • 文責:所長 弁護士 大澤耕平
  • 最終更新日:2023年3月30日

1 裁判例の動向

近親者が被害者の看護等の為に休業し、休業損害を請求した場合について、裁判例は肯定例と否定例に分かれています。

過去10年ほどの裁判例における肯定例としては、以下のようなものがあります。

⑴ 名古屋地判平成24年11月27日

10歳の女児が入院し、その父親が入院の付添いのため5日間休業したことについて、付添看護費に代えて入院付添いのための休業損害を認めた。

⑵ 名古屋地判平成21年3月10日交民42巻2号371頁

6歳の児童が頭部外傷等を負い、父親が事故直後有給休暇をとって16日間会社を休業し被害者に付き添った場合に、被害者には母親の付添いにより入院付添費も認められているから、付添いのための休業損害は原則として認められず、被害者が重大な傷害を負ったことに照らし、事故直後の期間に限って、休業損害を認めるのが相当であるとして、7日間の休業損害を認めた。

⑶ 大阪地判平成15年4月18日交民36巻2号526頁

交通事故による傷害により植物状態に陥った被害者を介護するため、父親が勤務先を欠勤して休業損害が生じた場合に、これが賠償されるべき損害と認められた。

また、否定例としては、以下のようなものがあります。

⑴ 東京地判平成22年9月30日交民43巻5号1265頁

交通事故により1級の両下肢足趾完全麻痺等の後遺障害を負った症状固定時19歳の男子の父親が被害者の介護に専念したとして休業損害を請求した場合、入院付添費、将来の介護費のなかで評価し尽くされているとして、別途父親の休業損害を認めなかった。

⑵ さいたま地判平成21年2月25日交民42巻1号218頁

四肢拘縮、意識障害等の後遺障害が残った被害者の子が、勤務先を休業して入院中の被害者に付き添った等した場合、付添看護費・介護費において評価し尽くされているとして、別途被害者の子の休業損害相当額を認めなかった。

⑶ 大阪地判平成17年9月21日交民38巻5号1263頁

看護のため退職せざるをえなくなった被害者の子の退職に伴う損害は、付添介護費として評価するのが相当として、付添看護費とは別に被害者の子の休業損害を認めなかった。

2 分析と検討

このような裁判例を踏まえると、裁判所は、近親者の休業損害について原則として否定するものの、例外として、直接被害者が非常に重篤で、あるいは重篤かつ幼児であるというように、当該近親者の付添いの必要性が非常に高く、勤務先を欠勤してでも付き添うことがやむを得ないと認められる場合には、被害者の付添費が近親者に反射したものとみて、休業損害を基礎として直接被害者の付添費の損害額を認定し、あるいは近親者の休業損害(ただし直接被害者に付添費を損害と認定した場合はその差額)を認める見解をとっているようです。

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