自己破産と学資保険への影響
1 破産した場合の財産の処分権限の原則
自己破産が開始した場合、破産者の財産は、自由財産として認められる一部の例外を除いて、そのすべてが破産財産として破産管財人の管理するところとなり、最終的には換価されて債権者に配当されることになります。
ここでいう破産者の財産には、現金や預貯金だけでなく、保険を解約した場合に保険会社から返戻されるお金も含まれます。
2 保険の解約返戻金と学資保険
破産者が自分を受取人としてかけていた保険の解約返戻金が、配当されることについては、疑問を覚える人は少ないと思います。
他方で、学資保険は、本来、破産者ではなく子供のために保険料を積み立て、将来、破産者の子供が進学等でまとまったお金が必要となった際に利用できるようにするための保険です。
そのため、実質的に学資保険で利益を受けるのは、子供であって破産者ではないため、学資保険まで破産手続きで配当の対象にされなければならないのかという疑問を覚える方がいます。
特に、夫婦で頑張って学資保険をためてきたのに、学資保険の名義が夫で、夫が破産するから学資保険の全額を破産管財人が管理して解約し、債権者に配当されることについて、納得できない配偶者は少なくないと思われます。
もっとも、破産者の財産であるか否かは、原則として当該保険の契約名義で判断されますので、破産者が契約者となっている学資保険は破産手続きのなかで解約され配当にまわされることとなります。
また、名義が破産者自身でなくても、例えば妻名義で子供のための学資保険をかけていたが、世帯で収入を得ているのは夫だけであり、夫の収入から学資保険の積み立てがされていることが明らかであるような場合には、妻名義の学資保険が実質的に夫の財産であると判断されて解約と配当の対象とされる可能性があります。
このように、学資保険は原則として解約の対象と破産手続きの中でされてしまいます。
3 破産管財人との協議
ただし、どうしても学資保険は子供のために残しておきたいというような希望がある場合、破産管財人と協議して、学資保険の解約返戻金相当額を、破産者以外の親族が代わりに財団に組み入れるなどして、学資保険を財団から放棄してもらうなどの調整ができることもあります。