「個人再生」に関するお役立ち情報
個人再生と偏頗弁済
1 はじめに
偏頗弁済とは、一部の債権者にだけ偏った返済をすることをいいます。
個人再生では、債権者を平等に扱うことが求められます。
このような債権者の平等に反して、一部、債権者にだけ優先して返済をしてしまうと、偏頗弁済となり、個人再生の手続きを進めるうえで不利益を受ける恐れがあります。
2 影響
偏頗弁済を行った場合に考えられる、不利益が個人再生で返済しなければならない金額が増える可能性があるということです。
個人再生は、借金を減額してから分割で返済していく手続きですが、清算価値保障原則といって、自己破産をした場合に債権者に配当可能な財産の総額より低い金額には借金を減額しないというルールがございます。
偏頗弁済をした場合、自己破産の手続では、破産管財人が否認権を行使するなどの方法で、偏頗弁済によって流失してしまった破産者の財産を回復させます。
そのため、個人再生の場合には、偏頗弁済によって流失した財産についても、実際には債務者の手元に残っていなくても、財産目録上は偏頗弁済をせずに財産が残っているのと同じ金額で計算されることになります。
その結果、実際に手元に残っている財産よりも高い金額で清算価値が計算され、個人再生の進行に支障が生じる恐れがあります。
3 具体的な対応
この影響は、偏頗弁済額が少額であれば個人再生の再生計画にとって致命傷にはなりませんが、例えば以下のような事例では偏頗弁済が理由で個人再生自体ができなくなる恐れもあります。
例えば、負債総額が500万円で1か月の返済は3万円が限界という家計の方が個人再生をする場合、清算価値を考慮しなければ500万円の1/5である最低弁済額100万円を3年かけて支払う再生計画を立てれば1か月当たりの返済額は約28000円であり、3万円以内です。
この場合、履行可能性が認められ、個人再生の再生計画が認められる可能性が高いといえます。
このような場合で、清算価値に影響を与える事情として、保険の解約返戻金が200万円あったとします。
そうすると、清算価値は200万円となりますので、個人再生が認められるには、1か月あたり5万6000円(200万円÷36カ月)の支払い能力がなければなりません。
そうすると、1か月あたりの返済額の限界が3万円のため、一見すると個人再生ができないように思えますが、保険の解約返戻金については、保険を解約したり契約者貸付制度を利用したりして、現金に換えて返済に充てることが容易にできます。
そのため、例えば、上記の例で保険を解約してその200万円を返済に充てれば個人再生によって借金を500万円から200万円に減額して完済することが可能になります。
このようなケースで、仮に保険を解約した200万円を一部の債権者にだけ一括で支払ってしまった場合どうなるでしょうか。
この場合、借金の残債務額は300万円になりますが、清算価値は偏頗弁済によって流失した財産分が清算価値に上乗せされるため200万円と評価されます。
そうすると、実際にはお金が手元にのこっていないにもかかわらず自分自身の収入から毎月56000円程度の支払ができないと個人再生が認められないことになり、個人再生が不認可となってしまいます。
4 まとめ
このように、偏頗弁済は内容によっては、個人再生が不認可になってしまう原因にもなりうるものですので、注意が必要です。